デザイナーとしての人生
佐藤さんは岡山県を中心に一般企業から公的機関など、幅広い場所でアートディレクター/デザイナーとして活躍されています。「ヒト・モノ・コトを、ポジティブに結ぶ。」という理念のもとに、しっかりとしたヒアリングをおこない、クライアントに寄り添った制作手法を得意とされています。

デザイナーとは
職業の魅力や葛藤、やりがいや喜びなどをお話ししていただこうと思います。
僕も知らない、佐藤さんの考えをたっぷり聞かせてください。
「デザイナーとはデザインをする人なのかな」と何となくはわかるのですが、
佐藤さんのホームページを見させていただくと、
”アートディレクター”とか“デザインストラテジスト”という
肩書が書かれていますよね。
“デザイナー”とそういう肩書の人の違いって何ですか?
一例ですが、はじめはアシスタントデザイナーになって、
次にデザイナー、その時の上司がアートディレクターで、
さらにその上がクリエイティブディレクターとなってきます。
色々な見解がありますが、アートディレクターとは直訳すると芸術監督です。
ですので、デザイナーや写真家、コピーライターなどを、
視覚や芸術的な観点でプロジェクトをまとめる仕事になってきます。
コンサルティング寄りの職種ですね。
デザインマネジメントの観点で、デザインやブランドなどを戦略的に考える人、
という意味になってきます。
実際には自分が現場に関わらなくなるのですか?
ただ、アートディレクターだと、どちらもいます。
まったく手を動かさない人もいれば、
デザインをしながらアートディレクションする人もいます。
完成形がみえていて、その絵に近づけるために
自分が手を動かした方が良い場合もあれば、
誰かに頼んだ方が良い場合もあります。
もっと言うと、アートディレクターでパソコンを使えない人もいます。
クリエイティブディレクターになると、さらに手を動かさない人もいて、
例えばコピーライター出身のクリエイティブディレクターは、
まったく絵が描けない人もいますね。
一般企業とデザイン業界の共通点
役職が上がればプレイングマネージャーになって、
管理職、経営管理者や幹部、役員になるという流れが一般的だと思います。
そういう時に、例えば営業畑から上がっていくけど、
会社全体をみるようになる役員がいるのと同じように、
役職が上がっていくたびに見たり、管理したりする場所が
変わっていくってことがあるんですか?
特に大手の広告代理店では職域がはっきりと分かれていて、
他の会社と同様に部長などの肩書きもあります。
これを横文字にするとクリエイティブディレクターなどで、
部署やチームをまとめる管理業務が加わってきます。
業界がアートディレクターやクリエイティブディレクターというような、
たくさんの階層に分かれているとイメージしている人はいないと思います。
デザイナーはデザイナーのイメージだと思うんです。
佐藤さんもそうですけど、
デザイナーになろうと思うきっかけになったのは、
やっぱりデザインから入るわけですか?
広告を作りたいならデザイナー、
本をつくりたいなら編集者という道で
「何かをつくりたい」という想いをベースにして
職業を決めていくケースが多いような気がします。
例えば本をつくろうと思って最初は本をつくったけど、
いつの間にか広告デザインや企業の
ブランディングデザインをしたりと派生していくわけですね。
広告は、色々と領域をまたがってボーダーレスに
やっている人がいるんですけど、
僕らデザイナーの職業は少し分かりにくくて、
分野ごとにスキルが違ってきます。ブックデザイナーや
エディトリアルデザイナーなど、
本や編集に関わるような仕事をしている人たちは、
どちらかというと職人器質かもしれません。
なので、その道を極めていくことが多い印象を持ちます。
例えば、本を年間何百冊もデザインするとかでしょうか。
ずっとデザインをしたいんだという人はずっとデザインしているし、
何かまとめていくのが得意なんだという人は
そっちの仕事の方に向かっていくということですか?
得手不得手や好き嫌いで道が分かれていく気がします。
デザイナーやアートディレクターの中には管理や
ディレクションや苦手な人もいます。
そういう人の中にはアートディレクターと言いながらも、
職人的にデザインを極めていく人もいますね。
まったく絵が描けない人が
クリエイティブディレクターになれていることを考えたら、
デザインのジャンルの職業に就くとしたら、
別に、絵が上手いとか美的センスがいいとか、
そういうのがなくてもできるとこいうことですか?
僕ら一般の人のイメージでは、
デザイナーは絵が苦手な人にはなれないみたいなイメージがあるんですが・・・
別に絵が描けなくても、デザインをしている人はいます。
ただ、センスは必要だと僕は思います。
絵をつくる上での感性、現代社会の日常や時代の
世相を見る中で「かっこいい」や「かわいい」の美意識、
その辺りのセンスは必要かなと思います。
だからといって絵が描けなくても、
アートディレクターという職種に就いてしまえば
絵が描ける人に頼めばいいし、
デザインをチームとしてつくるなど、できる人に頼むことが多いですね。
そうでもないんですか?
逆に言うと、絵が描けても言葉が甘かったりするケースがありますね。
センスがめちゃめちゃいい人の中には、
絵が見えているのに言語化ができない。
ただ、センスがいい人を探してくるセンスがあって、
頼んでつくってもらうというパターンもありますね。
どの情報を組み合わせていけば何が生まれるのか、
ということが分かっていることになってきますよね。
そういう気がします。
GUEST PROFILE

佐藤豪人|アートディレクター/デザイナー|HIDETO SATO DESIGN
1985年岡山県生まれ。デザインストラテジスト/アートディレクター/デザイナー。2007年「ヒト・モノ・コトを、ポジティブに結ぶ。」を理念にデザインスタジオを設立。デザインマネジメントの観点でブランディングを主軸としてコミュニケーションの創造を目指している。岡山県内外の法人・個人・事業・商品でブランディング実績多数。また、デザインはCI/VI・広告・パッケージ・サイン・Webなど領域を横断して展開。