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経営者×プロフェッショナルの対談記事

Vol.2/4

税理士として目指すもの

税理士
北條伊織さん|税理士法人徳島

北條さんは徳島県で税理士法人徳島を経営されている敏腕税理士。20代で税理士試験に合格し、経営者と共に成長していく支援スタイルで現在は中小企業の黒字化支援に力を注いでいます。

とある事件をきっかけに独立へ。

三谷
先生も、始めはそういう一般的な税理士事務所に就職し、
それから自分で独立されて、今は大きい事務所になっていますが、
あまり理想がなければ就職したままずっと
サラリーマンとして働き続けてもよかったわけですよね。

だけど、職場を飛び出して自分でやっていこう、
大きく羽ばたいていこうとしたのは、
何か思いがあったからなんでしょうか?

北條
そもそも独立するつもりはなかったんです。
あまり自分からトップに立っていくタイプではないので、
組織の中でナンバー2的な立場でいた方がいいと思っていたし、
どちらかというと職人的な、突き詰めた仕事をしたいというイメージがあったので、
前に勤務していた事務所で働き続けるつもりでした。
ただ、そこでちょっとした事件というか、困ったことが起きたんです。
三谷
困ったことですか?
北條
はい。
今でも経営をしていく上ですごく胸に刻まれている出来事ですけど、
簡単に言うと、お客様からの依頼で税金を安くしてくれと
頼まれるわけです。
それ自体は当たり前のことですが、
ただ、行き過ぎたことを望むお客様もいらっしゃって、
それを受けてしまうことも出来なくはないんです。
税務以外でもそうですが、たとえば経営が苦しいときや、
仕事を得るためにどうしても必要な時に、
会計とか税金の面で、少しできることがあるのはあるんですよね。
ただ、それは正しくない部分がとても多い。
三谷
なるほど。
北條
当時、その手の依頼がすごく多くかったのですが、
僕が勤務していた事務所はそうした依頼をどんどん受け入れていて、お客様のためにやってあげる、みたいなところがありましたね。

ただそれは違法というか、やり過ぎだということで、
一時期すごく叩かれてしまった。

架空計上といったことを少なからずやっていたのが問題になって、
お客様のところに県からの調査も色々入ったりしたんです。
その時は100件近くお客様がいて、僕も当時20代前半でしたが、
それなりに責任も持たせてもらっていたので、
全件回って行ったのですが、
やっぱりお客様は「うちが頼んだので、会計事務所は悪くないです」とは言わないですよね。
「いや、うちはよく分からないです。全部会計事務所に任せてたんです」ってみんな言うんですよ。
それで、ああ、やっぱり人って絶対こうなるなと思って。

北條
だから、やはり公明正大にちゃんと闘っていかないと、
変なことをしてそれがお客様のためになったとしても、
長い目で見れば必ず余計にお客様を苦しめることになるし、
その会社は指名停止になったりするわけです。

そういう結果を生んでいるので、
僕らがお客様に「それをやったらだめです。
将来に向けて、この点数にしたいのならば、
こういう風にしていきましょう」と言わないといけない。
後から手を入れて点数を上げるのではなくて、
そういう風に持っていけば違法ではないし、
そうやって本質的に改善していかないと、取り繕って、
お客様の目先の要望を聞いてあげても、
それだけでは長く続けていけないなと感じたので、
それで辞めようと思いました。

三谷
その経験が、先生のいろんな価値観や考え方を変えたというか、
もともとあったものを固めていったと思いますが、
そうしたことがあって、じゃあ、自分の思う公明正大な、
正義がある税理士としての仕事をやっていこうということで、独立されたわけですね。
北條
そうですね。
本当に自分が正しいと思うことを胸を張ってやりたいなと。
それが綺麗ごとに聞こえることもあるし、
独立してから「何を綺麗ごと言ってるんだ」と言われたこともたくさんあります。
勤務時代からついてきてくれたお客さんが2件だけありましたが、
僕がそれまでとは180度違うことを言うから、すぐ解約になりました。
三谷
一からやるというのは大変なことでしたね。
計画的に独立しようとしたわけではなかったでしょうし。
北條
そうですね。
ほぼほぼ貯金もなかったですし。
突然でしたね。
三谷
そういう事件があって、自分の中で価値観が変わって、
自分でやった方がいいと思って独立したので、
準備も何もなかったんですね。
北條
前の先生にはすごくお世話になって、
仕事では本当にたくさん経験させてもらいました。

記帳代行とか、多少会計的なテクニック論でどうにかする技術を
身につけられたことはすごく感謝しているし、
今もそれがあるから、やらないという選択ができるんですよ。

できるけどやらない、という選択が今ならできる。

なので、すごくお世話になったんですが、
やはり折角頑張って資格を取ったのに、そういう仕事だけでは価値がないし、
もっと言えば、当時は若かったですが、
これから部下を抱えるようになった時に、
自分がしたような苦しみをさせたくないと。
すごく綺麗な話に聞こえますけど、
これではうちの組織が大きくなれないなと思いました。
それを変えていけば良かったのでしょうけど、
変えるより自分がゼロからやった方が早いなと考えたんです。

大きな事件を乗り越えて

三谷
先生が独立されてから、
今では事務所の規模も大きくなっていますが、
やはり、そういう信念を持って税理士としての仕事をされたことで、
お客様もだんだんついてくるし、紹介も増えて、
軌道に乗っていったんでしょうね。
北條
そうですね。
もし何でも受けていたら、
たぶん確実に今の1.5倍くらいになっていたと思います。
だけど、何でも受けることはしなかったですね。
三谷
でも、それは苦しい選択でもあると思います。
税理士であると同時に、経営者として飯を食っていかないといけないですから。
僕も経営者として経験がありますが、
信念とは相容れないけれど、
仕事は取りたいという時はありましたか?
北條
喉から手が出るくらい
欲しい仕事はたくさんありました。
三谷
それでもやはり、
自分の信念を優先させたんですね。
北條
入口のところでは、皆さん何かが
あるということは別にないので、分からないですよね。
僕が絶対的に入口で判断するのは、TKCシステムを使って、
ちゃんと月次決算をやって、業績を伸ばしていきましょうと。
ただ単純にそれだけなんです。

だけど、もう年に1回とか2、3回でいいので、
資料を持っていくからそれを入力して
決算書を作ってくれって言われるんですよね。
それをどうにか啓蒙しようと説得もしますけど、
どうしても理解していただけない時は、お受けしないことにしています。

三谷
クライアントとの価値観の問題ですね。
経営者に寄り添って、会社に入り込んで、一緒に良くしていこうとしても、
逆にそれが面倒くさいとか、疎ましいとか、

そんなのは適当でいいんだよという方もいるでしょうから。
でも、先生がおっしゃるように、正しいことを貫くというのは、
長く続けられる秘訣だと思います。
いろんな経験から、先生の仕事観が
出来上がっていく過程を聞けてよかったです。

税理士以外の資格を持つことのメリット

三谷
ところで先生は税理士業以外に、
行政書士の資格も持っていますよね。
それは士業をいくつか持っていた方が
仕事がしやすいからでしょうか?
北條
形式的な話からすると、
別に僕は行政書士の試験を受けたわけではないんです。
税理士資格を取ると、行政書士試験を受けなくても
士業としての登録はできるんです。
三谷
ほう~、そうなんですね。
北條
いくつかありますが、
例えば司法書士では行政書士の資格はくれません。
似ているはずなのにくれない。
だけど、社労士と税理士の2つは行政書士の登録ができる。
もっと言えば、弁護士は登録さえすれば税理士業務もできます。

国家資格の上の方を取れば、
多少下がついてくるみたいなところがあるんです。
必要かと言えば、そんなに必要ではないですが、
税理士業務に付随していろんなところに届出をする軽微な仕事があって、
そこは一応、行政書士免許がないと
代理人として行けないので、それで登録しているくらいですね。

三谷
そういうことなんですね。
登録できれば仕事の幅が広がるので、
あった方がいいというお考えですか?
北條
はい。
例えばですが、税理士と司法書士の資格があれば
収入面は絶対に広がるんですよ。
司法書士さんにお願いせずに商業登記などをすれば、
売上げは自分で増やせるわけですし。
なので、そういう意味では良いんですが
わざわざ全然違う士業をやる必要はないとも思っています。
税理士とか、司法書士さんもそうですが、
その分野でプロフェッショナルとしての力をしっかりつければ、
あとはその専門の方たちと一緒にやる方が、
全体的な仕事の質も上がると思っているからです。
三谷
お客さんにとってもその方がいいですよね。
北條
そうですよね。
広く浅くやれば収入は上がりますけれど、
あまりにも広く浅くというのはね。

三谷
頼む側も、全部頼めばやってくれると思うし、
どの士業でも、それぞれの仕事の深さがあって、
それが全部備わっているかは分からないですからね、
それだったら何人かのビジネスパートナーと組んで、
プロフェッショナル集団でやった方が
お客様も最大利益が得られる。
そうやってみんなで、このお客様の場合はこういう知識のある人がいいとか、
もっと補完してあげられるようなプロの先生を呼んできたりという風に、
一緒に仕事をすることもあるんですか?
北條
もちろんそうです。
ただ、弁護士さんや社労士さんでも、
案件によっては多少向き不向きはあります。
あの弁護士さんは、この案件にちょっと合わないなとか。
三谷
それはクライアントにとっても有難いですよね。
もっと言えば、クライアント側にすれば、
どこに頼めばいいかも分からないので、先生とお話する中で、
こういうことで困っているとか、こんなことをしたいと相談した時に、
それだったら、こういう職業の人が解決してくれるから
紹介しますよと言ってくれた方が安心だし、助かりますね。
北條
たぶん士業の中で、常に一番接触度合いが高いのは税理士だと思うんです。
弁護士にいつも接触しているような会社は危ないし、
司法書士も、経営や労務はあまり関係がない。
社労士も労務が中心ですよね。
しかし税理士は、会社にとって接触頻度が一番高いし、
いろんな経営者の方が一番気楽に連絡を取れるところだとすれば、
僕らがそういういろんなコミュニケーションを持っていて、
僕らからご紹介できたら一番いいかなと思っています。
三谷
税理士という仕事自体が、
会社から見ればフロントに当たるというか、
医者で言えば担当医みたいなところですよね。
まず内科の先生が診て、これは外科の診察が必要だから
紹介状を書きますとか、そういうことになりますね。
北條
僕らも正にそれを言ってて、
町医者でありたいなと思っているんです。
大がかりな外科手術はできないですが、それこそ上場する時は、
監査法人とか証券会社を紹介できて、例えば事業の利付けや、
借り入れカットをしないといけなかったら、
そういうファンドや専門の弁護士を紹介するという感じで。
三谷
かかりつけのお医者さんみたいな存在ですね。
ちょっと風邪気味で調子が悪かったら検査してもらって、
薬を飲んだら治る時もあれば、これはちょっとやばいかもしれないから
総合病院に行った方がいいよ、とアドバイスしてくれる時もある。
そう考えたら、税理士という仕事はすごく広がりがあるというか、
最もフロントに立つ仕事だから、お客様にすれば
一番大事なところになりますね。

次回は北條さんが様々な規模の事務所を経験してきたなかで、組織としての良さや強みなどをお伺いしたお話しをご紹介します。
取材・文:藤井まどか|株式会社プラザセレクト

GUEST PROFILE

北條伊織|税理士|税理士法人徳島

税理士法人 徳島 社員税理士/北條伊織行政書士事務所 所長/徳島相続相談プラザ 運営責任者。 各種法人・個人事業者の財務・税務に関する顧問を務め、主に創業・経営改善・資金調達・事業承継・相続対策などの支援業務を行う。中小企業の黒字化支援に力を入れており、特に管理会計・業績管理体制の構築支援を得意とし、関与先企業の100%黒字化を目指している。

SHIGOTOにある

「SHIGOTOにある」とは、様々な業種の第一線で活躍するプロフェッショナルの人たちとの対談を通じ、その仕事にある新しい世界を知るコンテンツです。

Interviewer

株式会社プラザセレクト<br>株式会社プラザセレクトワークス 代表取締役 三谷 浩之
株式会社プラザセレクト
株式会社プラザセレクトワークス
代表取締役

三谷 浩之

1979年香川県高松市生まれ。日本大学理工学部卒業。大学卒業後に入社した総合建築業で建築不動産ノウハウを学ぶ。 その後、四国の地場有力建築会社を経て2015年に独立。地域を豊かにする「生活総合支援企業」を創ることを目的に株式会社プラザセレクトを創業。 現在は徳島・香川という地方エリアでシンプルなデザイン住宅の販売、投資用住宅の提案販売の事業を展開。 「Be Smile にこっを集めよう!」をスローガンに理念を重視した経営を行っている。代表著書に自身の新人時代からの仕事観を綴った「楽しく生きよう!よく遊びよく働け 想いを形にする仕事術」がある。

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