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経営者×プロフェッショナルの対談記事

Vol.4/4

住宅の作り手として

経営者
中条和豊さん|株式会社高松ハウジング 代表取締役

込められた想いと、大切にしていくもの

三谷
高松ハウジングさんという会社名には、何か思いがあったんですか?こういう思いを込めてこの名前を付けたとか。
中条
名前に関する由来を父親から聞いてはいないですが「真心を伝える住まいづくり」というキャッチフレーズをずっと付けていますね。建物だけではなく、その建物に対する職人さんの思いも乗せて引き渡していきたいと考えて付けたと聞いてます。その思いで今もやっています。
三谷
社長もそれを忘れずにいるし、社員さんにも、そういうお話をされるんですか。
中条
そうですね。話したりもします。
三谷
何か指標となる同じ旗を持って、そこに向かって頑張るというのは、集団組織で動く時に大事なことだと思いますし、あるとないとでは力の発揮の仕方が違いますからね。
中条
はい。うちでは名刺にもそれを入れて共有していますね。

三谷
経営者という側面と、建築の技術者という側面とがあると思いますが、持ち物や服装、商売道具で何かこだわりはありますか?
中条
私たちは仕事をする上で、道具を大事にして整理整頓をすることから始まると思います。清潔な身だしなみも必要ですが、職人さんであれば道具を大事にして、整理整頓をするというのが非常に重要だと思いますね。
三谷
古い、新しいではなくて、きれいに整っているかどうかですね。
中条
先ほど職人さんを紹介してもらうという話をしましたが、その時に車の中や道具が整理整頓されているかどうかも必ず見ます。整理整頓されている職人さんは、間違いなく仕事もきれいです。当然、お客様も同じように見ると思いますね。
三谷
仕事だけではなく、すべてにおいて大事なことですね。
三谷
仕事をしていく中で、ある事件や出来事があって仕事観や価値観が変わったり、何かに気付いたとか、そういう転換点はありましたか?
中条
祖父が大工になる時に修行に行っていた大工さんが、私たちにお客様を紹介してくれたことがあったんですね。その最中に実は私たちが原因のトラブルが発生していたのですが、それが私の耳まで届いておらず、トラブル分も含めて請求をしてしまいました。結果的に紹介してくれた大工さんから「どうなってるんだ?こんなことでは信用がガタ落ちする。わしの顔も潰しているぞ」とお叱りを受けました。

それから、最後は必ず自分が現場を見るように心掛けようと思いましたね。
これが100%できているかと言ったら、大方できていると思います。例えば職人さんが現場へ行って工事を終わらせて「このようにしてちゃんと終わらせてきました」と報告を受けても、必ず自分の目で見に行くというのは今でも心掛けています。

三谷
それはすごいことですね。
中条
大工さんからそう言われて初めて、こんなことをしていたら本当に信用を失うと気付きました。大変ですが、最後は自分できちんと見るようにしています。

三谷
お話を聞けば聞くほど、仕事に対する基準値が高いなと感じます。
中条
どうなんでしょう、そんなことはないとは思うんですが。。でもやはり、すべて信用と人とのつながりで仕事をいただいていますし、職人さんともつながっていますからね。そこが切れるようなことをしてしまうと、本当に仕事が回らなくなるので、大事なことだと思います。

建築業としての苦悩や喜び

三谷
経営者として、また技術者として、この仕事にある魅力や喜び、やりがい、逆に大変なことや、ご苦労なども含めて、いいことと悪いことを教えていただけたらと思います。
中条
やはりいいことは、先ほどもお話ししたように、お客様にご満足いただいた時は非常に喜んでもらえるというところですね。こちらは商売をさせてもらっているので恐縮なんですが「本当にありがとうね、いい家になった」というお声をいただくと、本当にいい気持ちになります。そういう面ではありがたい商売だと思います。
発言者
逆に、これは大変だなというのは?
中条
やはり人が作るものですから、例えば1+1が2にならないところがたまにあります。わかりやすく言うと、家の隅々が全部90度になっているかといえば、間違いなくそうなっていないんですね。この業界はクレーム産業と呼ばれるくらい細かい部分まで仰るお客様もいらっしゃいます。僕らは口には出せないですが、それくらいは許容範囲だろうと思っていても、そう思われないお客様も中にはおられる。そのあたりは大変なところかなと感じています。
三谷
額も思いも大きいし、取り換えがきかず長い間使うものですからね。お客様の思いが強い分、喜んでもらう時と、お怒りやお叱りを受ける時の振れ幅が大きいですよね。

中条
すごく大きいです。
三谷
人間が現場で作るもので、工場で機械が作るものではないので、100%完全なものはなかなか難しいかもしれませんが、それをいかに100%に近づけていくかということですね。
中条
その通りだと思います。

高松ハウジングのこれから

三谷
中条社長の心の中にある今後の展望や目標を教えていただいてもいいですか?
中条
緩やかな右肩上がりでもいいので、会社を存続させていくというのが第一目標です。従業員を抱えていますし、従業員の家族も当然ながら含まれますので。まずは会社を維持していくのが一番で、その上で給料も上げていければと思っています。

三谷
会社が潰れないというのは一番大事ですよね。
中条
間違いなく一番だと思います。でも意外とそれって大変なことなんですよね。
三谷
ごく少数の大企業や、大きくなった会社が、みんなが名前を知っている会社になったり、テレビに出ています。ですがその裏ではたくさんの数の会社がなくなっています。
中条
そうですね。もう建ててもらった会社がないからということで、依頼を受けることも結構あります。
三谷
今日はいろいろとお話を聞かせていただいて、普段は聞けないことを聞けてよかったです。どうもありがとうございます。
発言者
こちらこそ、どうもありがとうございました。

取材・文:藤井まどか|株式会社プラザセレクト

GUEST PROFILE

中条和豊|経営者|株式会社高松ハウジング

昭和45年、香川県生まれ。地元の酒店に就職し、営業や社会人としての基礎スキルを学んだ後、祖父の代から続く実家の「株式会社高松ハウジング」に勤務する。自身も職人として現場に出つつ、平成9年からは取締役として経営にも従事するように。代表取締役に就任した今でも変わらず現場の様子を見に行くなど、「現場の大切さ」を忘れない経営に徹している。

編集後記

終始穏やかな口調で、会社を経営する難しさや職人として大切にすべき"まごころ"などを語ってくださった中条社長。異業種で働いていたからこその学びや経験を生かした経営方針は、一人の人間としてもビジネスマンとしても尊敬すべき点がとても多かったです。
株式会社プラザセレクト
株式会社プラザセレクトワークス
代表取締役 三谷 浩之

SHIGOTOにある

「SHIGOTOにある」とは、様々な業種の第一線で活躍するプロフェッショナルの人たちとの対談を通じ、その仕事にある新しい世界を知るコンテンツです。

Interviewer

株式会社プラザセレクト<br>株式会社プラザセレクトワークス 代表取締役 三谷 浩之
株式会社プラザセレクト
株式会社プラザセレクトワークス
代表取締役

三谷 浩之

1979年香川県高松市生まれ。日本大学理工学部卒業。大学卒業後に入社した総合建築業で建築不動産ノウハウを学ぶ。 その後、四国の地場有力建築会社を経て2015年に独立。地域を豊かにする「生活総合支援企業」を創ることを目的に株式会社プラザセレクトを創業。 現在は徳島・香川という地方エリアでシンプルなデザイン住宅の販売、投資用住宅の提案販売の事業を展開。 「Be Smile にこっを集めよう!」をスローガンに理念を重視した経営を行っている。代表著書に自身の新人時代からの仕事観を綴った「楽しく生きよう!よく遊びよく働け 想いを形にする仕事術」がある。

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